商品やリターンを豪華にするのではなく、純粋な応援を募る設計で100万円を達成した事例です。
76人の支援者とともに20.2日で目標を突破した数字の裏側を、クラファン相談室が紐解きます。
どんなプロジェクトだったか
クラファン相談室です。
運営元のfulfull株式会社として、日々さまざまなクラウドファンディングの設計をサポートしています。
今回ご紹介するのは、山梨県で葡萄農家を営む事業者が実施した再建プロジェクトです。
自然災害などによって倒壊してしまった葡萄棚を再建し、再び美味しいシャインマスカットを届けることを目指して立ち上げられました。
プロジェクトの主な公開データは以下の通りです。
- カテゴリ:フード・飲食店
- 目標金額:1,000,000円
- 最終支援金額:1,053,000円(達成率105%)
- 支援者数:76人
- 実施期間:2026年8月30日〜2026年9月25日(約27日間)
- 目標到達スピード:公開から20.2日
お気に入り登録数は40件、コメント数は0件、売り切れたリターンは0種という結果でした。
派手な拡散やコメントの盛り上がりがあったわけではありませんが、確実に100万円という目標をクリアしています。
このプロジェクトがどのようにして目標を達成できたのか、具体的な数字を見ながら紐解いていきましょう。
数字から見えること
この事例で最も注目すべき点は、支援者数と支援金額の集まり方の違いです。
全8種類のリターンの実績を詳しく見てみましょう。
支援者数(人数の山)は、5,000円〜10,000円の価格帯に集中していました。
5,000円の「手軽に味を楽しんで応援」コースには15人が参加しました。
5,000円の「純粋応援コース」には10人が参加しました。
この2つを合わせると25人となり、支援者全体の約33%を占めます。
また、10,000円の「純粋応援コース」には17人が参加しました。
10,000円の「自慢の味を詰め込んだ」コースには7人が参加しました。
この2つを合わせると24人となり、支援者全体の約31.5%を占めます。
つまり、5,000円と10,000円のコースだけで、全支援者76人のうち6成以上にあたる49人が集まったことになります。
手頃な価格帯が、多くの人が支援に踏み切るきっかけになっていたことがわかります。
一方で、支援金額(金額の山)に目を向けると、まったく異なる景色が見えてきます。
最も多くのお金が集まったのは、30,000円の「純粋応援コース」でした。
支援者数は14人ですが、集まった金額は420,000円に達します。
これだけで、最終集金金額である1,053,000円の約44%を占めているのです。
さらに「純粋応援コース(お礼メール・活動報告)」という、商品が届かないコース全体を合計してみます。
- 3,000円(3人):9,000円
- 5,000円(10人):50,000円
- 10,000円(17人):170,000円
- 30,000円(14人):420,000円
これら純粋応援コースの合計は、支援者数で44人(全体の約58%)、集まった金額で649,000円(全体の約62%)となりました。
返礼品として加工品や葡萄を届けるコースよりも、純粋に応援だけを送るコースの方が、人数・金額ともに上回る結果となったのです。

なぜ届いたと考えられるか
なぜ商品の送付を伴わない純粋応援コースに、これほど多くの金額が集まったのでしょうか。
クラファン相談室では、以下の要因が効いたのではないかと考えています。
まず考えられるのは、「倒壊からの再建」という目的の明確さと切実さです。
葡萄棚が壊れてしまうという出来事は、農家にとって死活問題です。
「美味しい葡萄を食べたい」という購買意欲以上に、「困っている農家を直接助けたい」「一刻も早く畑を復旧してほしい」という共感が強く働いたと考えられます。
支援者にとって、一番のリターンは「葡萄棚が元通りになること」そのものだったのかもしれません。
次に、30,000円という高額な純粋応援コースを用意していた設計の良さが挙げられます。
もし仮に、純粋応援コースの上限が10,000円までしか設定されていなかったらどうなっていたでしょうか。
深く応援したいと思ってくれた14人の支援者がいたとしても、得られる金額は140,000円にとどまり、全体の達成率は大きく下がっていた可能性があります。
「熱量の高い支援者の受け皿」をあらかじめ作っておいたことが、20.2日での目標到達につながったと考えられます。
また、クラウドファンディングの原則である「初期の支援獲得」がしっかり行われていたと推測されます。
プロジェクト公開から20.2日で目標の100万円に達しています。
お気に入り数が40件、コメント数が0件という数字から推測すると、SNSでの爆発的な拡散による一新規客の獲得というよりも、知人や既存の顧客、地域関係者へ直接呼びかけた支援が大きな割合を占めていたと考えられます。
一般的に、公開直後の数日間にどれだけ支援を集められるかがプロジェクトの成否を分けます。
事前に応援してくれる人へ声をかけ、公開初日に支援が入る状態を作る「呼び水」の設計ができていたからこそ、早期達成につながったのではないでしょうか。
これから挑戦する人が持ち帰れること
目標金額30万円〜300万円を目指す個人や小さな事業者が、この事例から真似できるポイントを整理します。
第一に、商品がつかない「純粋応援コース」に高額な選択肢(3万円〜5万円など)を入れておくことです。
商品やサービスの原価がかからない応援枠を用意しておくことで、利益率を高めつつ熱量の高いファンからの支援を受け取ることができます。
リターンの準備や発送の手間を減らせる点も、人手不足になりがちな個人事業者にとって大きなメリットです。
第二に、リターンの価格帯を「参加しやすい中価格帯(5,000円〜10,000円)」と「金額を稼ぐ高価格帯」の両輪で組み立てることです。
支援者を増やすための5,000円〜10,000円コースで人数を集めつつ、高額コースで目標金額を一気に引き上げる構成が非常に有効です。
ただし、ここで注意していただきたい点があります。
どのようなプロジェクトでも、純粋応援コースを出せば集まるわけではありません。
実施しない方がいい場合についても、クラファン相談室としては正直にお伝えしておきます。
今回の事例のように「災害や設備の不調からの再建」「困窮からの救済」といった明確な共感理由がない場合、純粋応援コースだけで支援を集めるのは極めて困難です。
新規の顧客を獲得したい場合や、新商品を世に広めたいプロダクト系企画の場合は、返礼品となる商品の魅力(割引感や限定感)を前面に出す必要があります。
共感軸が弱く、商品の魅力で勝負すべき企画で応援コースばかりを並べても、支援者は魅力を感じづらいのが現実です。
自分たちの企画が「共感・応援型」なのか「商品・体験購入型」なのかを見極め、適切なリターン構成を選ぶことが大切です。
なお、CAMPFIREで目標金額に達しなかった場合に資金を受け取らない「All or Nothing方式」を採用する場合、サービス利用料12%と決済手数料5%を合わせた17%(税別)の手数料が発生します。
目標金額の設定を誤ると1円も受け取れなくなるリスクがあるため、事前に既存顧客や知人からどれくらいの初動支援が見込めるかを正確に計算しておきましょう。
ご自身の企画でどのようなリターン設計を組むべきか迷った際は、いつでもクラファン相談室にご相談ください。
実施者の方の意図や実際の経緯とは異なる可能性があります。
クラファン相談室(fulfull株式会社)はCAMPFIREのキュレーションパートナーですが、本プロジェクトの実施・支援には関与していません。
出典:https://camp-fire.jp/projects/974244/view